虹彩認証とは
1.これまでの考え方
これまで個人認証といえば、人の持ち物(鍵、旅券、ID証など)や覚えていることがら(パスワード、質問、PINなど)に基づくものが中心でした。これらは、悪意のある者の手によって悪用される可能性が排除できません。
2.生体照合の登場
近年は個人認証をより確実にするために生体照合が用いられるようになりました。個人の持ち物や記憶していることに頼るのではなく、身体特徴や行動特徴、つまり、体臭、歩き方、筆跡、キーボードの打ち方、声、指紋、顔、静脈、あるいは虹彩に頼るわけです。
3.生体照合と虹彩
各種の生体照合の中で虹彩照合が最も精度が高いといわれています。このことに加えて次の要素を検討する必要があります。
- 登録不能者の数
- 認証速度
- 使い勝手やマンマシンインターフェース
- 照合だけでなく認証も含む全体システムにおける汎用性とフレキシビリティ
- データベースの大きさ
- データベースの管理方法
- プライバシーの考慮
虹彩照合は、登録者と利用者の数が多く、これらの要素が問題になるような大型システムで優れた機能を発揮します。
4.技術の背景
雪の結晶に似て、瞳を取り囲む虹彩は、個人毎に異なります。母親の子宮内で無秩序的形成と呼ばれるランダムなパターンが形作られます。2つの虹彩が同じバターンとなる確率は10の78乗分の1に過ぎません
5.虹彩認証の優位性
虹彩認証は次の理由により、個人認証に最も適した技術といえます。
【極めて少ない登録不能率】
数ある生体照合方式の中で最も少ない登録不能率を誇ります。ほとんどの人が眼が1以上あるのでこの技術が利用できない人の数はわずかです。目の不自 由な人でも虹彩照合できる場合が少なからずあります。これは、虹彩照合が視力ではなく虹彩のパターンを照合の基準にしているからです。
【虹彩に特有の不変パターン】
虹彩パターンは長期間にわたって安定的です。虹彩パターンは生後1年程度で固定され、その後は外傷性障害や特別な疾病変化、あるいは眼科手術などに よるものを除いて変化はありません。このため、いったん登録すれば再登録の必要はほとんどありません。他の生体照合の場合は、声、体重、ヘアスタイル、 指、手の大きさ、切傷などの外的要因によって再登録の必要が生じることがあります。
【大きいデータベースの取扱いに最適】
虹彩照合は1対N検索モードで使える唯一の照合方式です。このため大きな利用者グループの取扱いを必要とする国家的認証などへの適用が可能です。大 きなデータベースを使っても認証精度が落ちることはありません。LG USAのIrisAccessはマイクロソフト社のSQLやオラクル社の9iなどの大形データベースと良い相性を持っています。
【他の追随を許さない照合検索スピード】
1対Nモードにおける検索スピードは他の生体照合技術とは比較になりません。検索スピードはデータベースの大きさによらず、サーバーに用いるハード ウェアの選択によります。英国政府公認の研究によれば、LG USAのIrisAccessは第2位の生体照合方式に比べ約20倍の速度があったとのことです。LG USAは高速照合エンジン「IrisAccelerator」を開発し、毎秒1千万照合を達成しました。
【1対N、1対1、ウィーガンド、トークンなど幅広い条件に追随】
虹彩照合は当初1対N照合モード用に設計されていましたが、PINや非接触IDカードと併用するべリファイ用1対1照合モードでも有効に機能しま す。IDカード併用の場合、利用者が自分の生体データを1眼当たり512バイトという小さなサイズでカードに収納して自身で管理できるので、、生体照合 データベース管理にまつわるプライバシーの問題が解決できます。つまり、IrisAccessでは、IDカード併用は、1対Nモードが出来ないからではな く、もっと高度な社会的要求に応えるために利用されるのです。
【安全な認証装置構成】
虹彩認証は単に虹彩のパターンを撮影してデジタル化し、暗号化されたテンプレートに再構築するだけです。512バイトの虹彩テンプレートは暗号化さ れて画像イメージに復元できないようにされます。このため虹彩認証は、最近急速に増加しているなりすまし犯罪に対しても強いとされています。同時に、撮像 はレーザーや強い光を用いることなく、しかも非接触で行えます。
【かんたんで直感的なユーザーインターフェース】
虹彩照合を使うのに難しいことは何もなく、直感的な操作ですみます。顔を近づけると、近接センサーが反応し、鏡を利用した光軸合わせが行えるようになります。位置合わせ、撮像そして最後の認証完了が音声ガイドでアナウンスされます。
6.虹彩照合技術とは?
虹彩照合は現在利用可能な生体照合技術の中で最高のものです。よくレーザー光を目の中に当てる網膜照合と間違われることがありますが、虹彩照合は単に虹彩を外から撮影するだけのものです。虹彩照合が優れている理由は次の通りです。
| 安定性 | 生後10ヶ月程度で形成され、生涯変化することがありません |
| ユニーク | 2つの虹彩パターンが一致する可能性はほぼゼロです |
| フレキシブル | スタンド゙アローンでも既存の出入管理システムに組み込んでも使えます |
| 信頼性 | 虹彩は盗難や紛失、偽造に極めて強いです |
| 体にやさしい |
網膜照合のようにレーザー光を用いることもなく、どんな生体照合方式よりも優れた非接触認証を提供します |
7.虹彩照合の原理
LG USAのIrisAccessは、PIN、パスワードやカードを使わずに高精度の照合ができる技術を持っています。登録には2分もかからず、認証は2秒以下でできるのです。カメラで撮像するだけですむので、登録が簡単でほとんどの場合生涯にわたって有効です。
虹彩スキャンという言葉が虹彩照合と同義に使われることがありますが、実際にはスキャンはしていないのです。虹彩画像は一般の商用カメラと同じようなビデオカメラで撮像されたものを使います。特に強い光源を必要としたり接写をしなければならないということもありません。
- 近接センサーによってカメラが起動すると、26~36cmの距離だけ離れるよう鏡や音声でガイドしてから自動フォーカス機能で撮像します。
- 瞳と白眼の間にある虹彩パターンを捉えて512バイトのデジタルテンプレートに変換します。このデータはデータベースに蓄えられ、照合制御ユニット(ICU)に送られます。
- 認証には2秒しかかかりません。
- IrisAccessに守られた入口に近づくと、カメラの近接センサーによってカメラユニットが起動します。鏡と音声によってガイドされたインターフェー スにより虹彩の位置確認ができたら撮影にかかります。登録時と同じ手法を使って画像をデジタル化し、既に登録済みの値と比較します。
- 入口用に割り当てられたICUでこの比較作業を行い、直接ドア開錠出力を出すか、ウィーガンド信号として出力してからドア制御盤経由で開錠します。
8.照合の方法
生体照合の中で虹彩照合が最も精度の高い方式であるということを疑う議論はまずありません。また、大きなデータベースを必要とするか、あるいはリアルタイムに認証できるか、といった点でも極めて優れた特性を持つのが虹彩照合です。
【精度】
- 虹彩は雪の結晶のようにひとつずつ違っています。同じ人でも左右の眼で虹彩は全く異なります。2つの虹彩パターンが合致する確率は10の78乗分の1に過ぎません。
- もうひとつ、驚くべきことに、他人受入率あるいは本人拒否率を決める閾値(しきいち)は一切人間が設定する必要がないのです。この技術においては、優れた EER(他人受入と本人拒否のエラー率が同じとなること)があるため、エラー率は120万分の1より悪くなることがありません。他の生体照合方式では、照 合結果が複数人出てくることがあり、最終的には人間による判定に委ねられることになります。
- 虹彩照合の精度がいいのは、まず虹彩自身に膨大なデータが含まれているからです。IrisAccessシステムでは、認証用テンプレートを作るために 240を超える自由度あるいは特徴を捉えます。指紋、顔、掌形でははるかに少ない自由度しかテンプレートに書き込むことができません。別の言い方をすれ ば、一つの虹彩テンプレートの中には、指紋、顔、掌形の3つを組み合わせたものよりも多いデータが組み込まれているのです。このため、虹彩の一部が(まぶ たや睫毛によって)隠れてしまっている場合でも確実に認証できます。
【安定性】
- 他の生体照合ではテンプレートが時間の経過とともに変化してしまいます。このため、どうしても再登録が必要になるのです。声は変化します。掌形や指紋は大 きさが変わります。従事する仕事によっては、外気温や体調でテンプレートが変わることがあるのです。外傷や眼科手術がなければ、虹彩は1歳で固定し生涯変 わることがありません。死亡すると、虹彩組織は体の他の組織よりも速く壊れてしまいます。虹彩の状態を見て死亡推定時刻の法的判定に使うこともあります。
【高速性】
- 他の生体照合は、大きなデータベースの1対N検索照合をリアルタイムで行うようには作られていません。英国国立物理学研究所が2001年に行った実験で は、単位時間当たりの検索速度が第2位の方式に比べて20倍近くも速かったと報告されています。速度と精度の関係を見ると、虹彩照合並みの速度で同程度の 精度を出す生体照合は他にはありませんでした。
- 逆に、指紋による検索をデータベースサイズ毎に検索時間加算したり検索速度増大策としてフィルターをかけてやってみても、指紋技術では複数の照合結果が出てしまい、結局人減による判定がないと精度が出せないことがわかりました。
【大規模システムに合う方式】
- 虹彩認証とLG USAのIrisAccessは、大規模のID利用システムや大形データベースが必要な企業全体レベルのセキュリティに適用するのにぴったりです。片目当 たりに必要な虹彩データはわずか512バイトなので、非常に大きなデータベースでも性能や精度を落とすことなく扱えます。
【人に優しい方式】
- 明るい光やレーザー光を当てることはありません。利用者は装置から25~35cm離れて立つことができます。また、眼鏡やコンタクトレンズをかけていても 精度に影響はありません。他の生体照合と違って、体を機械に接触させる必要がありません。このことは「ノンタッチ認証」というだけでなく、ゴム手袋などの 保護具を身に付けていても使えるということでもあります。
- 虹彩認証は普通、あらかじめ登録した人を検索するオプトインなので、不特定の群集の中に特定の人物がいるかどうかを確認する顔認証方式(訳注: 国産の顔 照合にはオプトイン方式のものがあります)のようなみっともない結果が生じることはありません。また、司法機関で利用されて評価の高い慰留指紋検索システ ムのような大規模データシステムとも一線を画すものです。
9.虹彩照合の今日と未来
汎用性の高い虹彩照合は、セキュリティを高めたり、サービスレベルを高めたり、不正防止をしながら利便性を高めるなど、様々な分野で利用ができます。
今日では...
現在、ほとんどの虹彩照合が出入管理目的で利用されています。この技術は発展性があるため、運輸交通、社会保険、国民IDなどの分野でも利用されることになるでしょう。一方、勤怠管理のような分野でも利用されています。
将来は...
民間も官公庁も物的セキュリティと情報セキュリティの融合が重要だと認識しています。しかし、一方でカンバン方式の在庫管理、複雑なサプライチェーン物流管理、「coopetition(競争と協調)」などの世界にもセキュリティの導入が求められています。
このような時代的要求に応えていくようなセキュリティシステムが求められており、特に生体照合分野への期待が高いといえます。ITと通信がどんどんワイヤレス化しており、ローバストで頑丈なID管理が求められています。
ITと無線分野でもトップを走るLG社では虹彩技術が物理セキュリティ、情報セキュリティ、そして無線通信分野に自然に組み込まれていくものと見ています。虹彩照合技術により、将来は次のようなことが可能になることでしょう。
- なりすまし不正がなく
- 売買契約の誤りがなく
- 資金移動が確実で
- 署名認証ができ
- クレジットカード認証が確実で
- 健康保険記録に正しくアクセスでき
- 知的財産に安全にアクセスできる
- その他