インタビュー: 8000万人を認証する大規模事例について
LGエレクトロニクス株式会社 虹彩事業本部 国際営業開発部長のモハメド・ムラド氏に大規模事例についてのインタビューです。
市民生活の向上を目的とした社会システムに生体照合が導入されました。官公庁として初めての大規模な採用事例です。LGエレクトロニクスは、インド のアンデラ・プラデーシュ州政府と8千万人に及ぶ州民を対象にした「食料配給カードプログラム」での虹彩登録事業の契約を交わしました。
Q: まず、LGエレクトロニクス株式会社 虹彩事業本部について説明してください。
A:
LGは1997年、複数の個人認証プラットホーム形成を目標に虹彩認証システム事業をスタートさせました。1999年、LGは世界で初めて虹彩照合 を実用化し、LG IrisAccess 2200™として発売しました。以来虹彩のリーダーとして開発を続け、現在では第三世代技術を展開しています。
2002年には米国に虹彩照合事業だけに特化した事業本部を設立しました。私はそのころ入社しています。ご存知のとおりLGはたいへん大きな会社で あり、各種家電品を製造していますが、当事業本部ではお客様の求めに応じて真に必要なものを提供することに徹しています。このようなソリューション追求ア プローチのために、これまでのLG社員とは異なるタイプの人材を擁しています。
Q: カナダの空港で採用されている「制限区域IDカード(RAIC)」について説明してください。
A
2004年にLGは生体照合が出入管理だけでなく個人認証分野で極めて有効な技術であると判断するようになりました。ちょうどその時期、先進的なシ ステム導入で知られるカナダ航空セキュリティ安全委員会が全国29の主要空港における複数方式の生体認証導入計画を策定していたのです。
LG製品が29の空港に設置され、とてもうまく活用されるようになりました。システムが目指したのは、各種データの管理に多様性を持たせることでし た。データをセンター管理とするだけでなく、通信障害に対処するために地域に分散保管したり、個人の生体情報を持主が自分で管理するためにICカードの中 に書き込むようなことができるようにしたのです。利用者が空港の制限区域に入るときには、ICカードに収納されている虹彩又は指紋のデータと、現場で読み 込んだ自身のデータの照合を行います。これによって個人情報の保全をしつつ、制限区域のセキュリティを維持するための最善のシステムが出来上がりました。
Q: これによってLGは貴重な経験をしたわけですね。その成果を具体的に説明してください。
A
確かに多くのことを学びました。一つは、目をどうやって機械に提示してもらうか、指をどんなふうに機械の上に置いてもらうか、照合技術とともに装置 の使い方を利用者に学んでもらうことがいかに大切かということです。もう一つは、統合システムの開発会社に、この技術をどうやって全体システムとして作り 込んでもらうかということです。とにかく、虹彩技術としては15万人もの人を登録して毎日使ってもらう大形システムは初めての経験でしたので、空港管理 者、実際の利用者、システム開発会社の皆さんと一緒に作り上げることに注力しました。これをその後のシステム作りに生かしているわけです。
Q: LGは現在インドで巨大システムを構築していますね。詳しく紹介してください。
A
本当に面白いシステムですよ。官公庁が生体照合に着目して市民のためのシステムを作った初めての試みですから。これは「食料配給カードプログラム」 といい、アンデラ・プラデーシュ州政府に納入しました。8千万人に及ぶ全ての州民を対象にした虹彩登録事業の契約です。このシステムが導入される前は、食 料品などの生活必需品配給を真に必要としている対象州民を特定することがたいへんだったのです。とにかく、不正行為が起きないシステムが必要でした。まず 全州2,000箇所に登録場を作りました。2005年5月から登録作業を始め、2006年中に6千万人が登録されました。州政府はこのデータを他の目的に も利用しようと考え、出生証明書発行手続き、徴税資格証明発行などへの応用を検討しています。これは、世界最大の生体データベースであり、LGが歴史を作 るお手伝いができたことを誇りに思っています。
Q: このシステムをきっかけにして他の応用システムに展開できるというのは素晴らしいことですね。
A
そうですね。このシステムを皮切りにインド政府レベルでの利用が検討されつつあります。旅券、社会保障や国民IDへの応用を考えているようです。これからが楽しみです。
Q: LGは一般の出入管理から空港セキュリティまで、国家IDから司法用まで、というふうに垂直の市場に対応していますね。これから伸びる分野はどこでしょうか。
A
5年ぐらいのスパンでは、すぐにお客様に提供でき、利益もあがる出入管理が伸びると思います。しかし、伸びが最も期待できるのは国レベルの利用だと 思います。LGはいくつかの国で防衛関連のID管理や国民ID管理、入境管理のプロジェクトに参画しています。一つのシステムが確立したら、別のeガバメ ント構想にも応用できます。出入管理や勤怠管理分野はまだ市場が出来上がりつつある段階なので、虹彩照合は倍々ゲームで伸びるでしょう。しかし、最も伸び が期待できるのは官公庁分野なんです。例えば、FBIはNGI(次世代ID)計画を開始しました。これからマルチモーダル環境における生体認証技術の可能 性を調査し、応用分野を想像するのです。
Q: 有益なお話をありがとうございました。
A
どういたしまして
(2008/1/18 「国際営業開発部長 モハメド・ムラドに聞く」終わり)